朝からメール。差出人は、ロンドンで会うことになっている友人。私の知り合いでは最も英国紳士に近い人だと思う。

いきなり、"For your information. What do you think?"(参考まで。どう思う?)で始まり、署名サイト、アヴァーズの呼び掛け文をペースト。

どうやら、日本政府が震災の寄付金を、調査捕鯨を再開するために流用しているという内容らしい。

What do you think?ってな、それが本当だったら大変です。しかし、イギリスのメディアでは、はっきりと義援金を流用していると書いている。ごめんなさい、英語で。

BBC
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-16064002

the Guardian
http://www.guardian.co.uk/world/2011/dec/07/japan-whaling-fleet-tsunami-earthquake-funds

で、どこが情報源かというと、グリーンピースジャパンの佐藤潤一事務局長ということになっている。

よく調べてみよう。佐藤潤一氏は何を言ったのか?グリーンピースジャパンのサイトより。

Green Peace Japan
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/pr20111201/

グリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一は「調査捕鯨の目的である商業捕鯨の再開はすでに形骸化しています。しかも、国際的な合意を得られないもので、わざわざ多額の税金を投入して行うものではありません」と述べました。

なるほど。他のNGOと共に日本政府へ宛てた書簡では、寄付金とか義援金という言葉は一切使われていない。「税金」とは言っているが。

http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20111201.pdf (日本語)

Letter: "Greenpeace Japan and 15 other NGOs letter to Japanese government
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/2011_Japanese_NGO_statement_for_departure_English.pdf(英文)

Sea Sheshepherd Advocate
http://www.seashepherdadvocate.com/

というサイトでは(どこまで信用できるかは定かでない)、佐藤潤一氏の発言を全文掲載している。

"Not only is the whaling industry unable to survive without large increases in government handouts, now it’s siphoning money away from the victims of the March 11 triple disasters - at a time when they need it most. This is a new low for the shameful whaling industry and the callous politicians who support it."
(捕鯨産業が政府からの施しを大幅に増額しなければ生き残れないというだけではない。今や、捕鯨産業は、3.11の三重災害の被災者から金を吸い上げている - 被災者が、その金を最も必要としている時に。これは、厚顔な捕鯨産業と、それを手助けする冷血な政治家による恥の上塗りである。)←ちょっと訳を変えました。

これなぁ、かなり誤解を招く表現だ。聞く人が聞くと、義援金を使っていると歪曲されかねない。特に、エコファシスト、シーシェパードなんかには好材料だ。佐藤さん、気を付けなきゃね。

ちなみに、グリーンピース全体では、そういう話になってはいないようだ。グリーンピース発表のニュースをかなり調べたが、この「事件」に関しては言及がない。

Green Peace
http://www.greenpeace.org/international/en/#tab=0

同じメディアでも、ウォールストリートジャーナルは、"The funds are from Japan’s own national budget, not charitable donations from overseas."(基金は日本政府の国家予算そのものであり、海外からのチャリティー募金ではない)とはっきり述べている。

Wall Street Journal
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2011/12/08/use-of-recovery-funds-stokes-japan-whaling-row/

ところが、シーシェパードは、まさに、義援金が調査捕鯨に流用されたと喧伝しているのだ。

Sea Shepherd
http://www.seashepherd.org/news-and-media/commentary-and-editorial.html

面白いのは、捕鯨に関して、グリーンピースとシーシェパードが対立しているということだ。

今回の事件を巡って、シーシェパードが「日本政府は津波の義援金を捕鯨のために使っている」という挑発をしたのはけしからんと、グリーンピースが非難しているらしい(下記サイトが信用できるものなら)。

Sea Sheshepherd Advocate
http://www.seashepherdadvocate.com/

Things have never been cordial between Sea Shepherd and Greenpeace (at least I can’t recall a time). But the fire is super hot right now. Greenpeace is accusing Sea Shepherd of being disgraceful for calling out Japan on spending Tsunami relief funds on whaling.

言葉というのは恐ろしいものだし、悪意をもって歪曲しようと思えばいくらでもできる。

アヴァーズでは、秒単位で署名が世界各国から集まっている。50万を超えることは確かだろう。シーシェパードの言い分を鵜呑みにした署名活動だ。

Tsunami Relief: Help People Not Whalers
http://www.avaaz.org/en/japan_disaster_funds_whaling_c?cl=1459927320&v=11637
"A massive global outcry can ... force Noda to use precious relief funds to save people, not kill whales."

ということで、私は、返事にこう書いた。

「津波義援金を被災者に分配するのは日本赤十字と被災した自治体である。調査捕鯨に使われたのは、日本政府の補正予算であり、日本政府が津波基金を流用したというのは誤りである。「調査捕鯨」には私も批判的であり、特に、そのサイズ(捕鯨頭数の多さ)は間違っていると思う。しかし、調査捕鯨に国家予算を使っているということは別の問題だ。議論の続きはロンドンで」

何かなぁ~、非常に疲れるよな。まず、シーシェパードは、どうやって、今回のデマに関して謝罪するのだろう。

義援金を流用しているか、政府予算を付けたかでは、道義的に大きく異なる。そんなことも分からないSS(あ、ナチス親衛隊のことではありません。シーシェパードの略語です)は、単なるエコビジネス団体だ。金さえ集まればそれでいいと。

これで、日本が捕鯨を止めたら、SSは倒産だ。いっそ、止めたら?それがSSにとって一番の打撃だ(笑)

これから買い物。その後は読書。鯨問題では、何人ものヨーロッパ人と絶交したもんだ。アイスランド人とノルウェー人は別だが。









コメント

Mimi
2011年12月18日20:33

listerさん

私も困っていました…。
私の友人のほとんどが義援金を送ってくれましたし、娘なんか、かなりの金額を集めましたから。
私も、『非常に疲れるよな』です。(苦笑)

典型的なmedia sensationalismの一例ですよね。"Japan Admits Tsunami Funds Used to Defend Whaling Fleet"なんてヘッドラインのニュースまであるので見てみたら、"The Japan Times reports:"ってあるので、そっちを読んでみたら、なんと、そこには、ちゃんと、"misrepresenting the truth"って書いてあるんですよ。
"Tsunami Funds"って言う言葉がambiguousでいけません。

3月、ロンドンで頑張ってくださいね。影ながら応援しています。

lister
2011年12月19日11:08

☆Mimiさん

事実関係を調査して、友人にメールを送って、日記書いて、何か、単に時間を浪費したとしか思えないんです(苦笑)

同じ記事の中でも"Tsunami Funds"で始め、後になると"Relief Funds"とか、もっと曖昧な表現に変わっていくのは、書いた人が確信犯だということ告白しているようなものですよね。

それはデマだと書こうとして調べたら、かなりキツい表現でも"a vicious rumor"とか"a mischievous rumor"、おっと、"rumour"でしたね(笑)くらいにしかならなくて、これじゃ流言飛語の類だな、日本語のデマと英語の"demagogy"にはかなり隔たりがあるんだなと思いました。

BBCやGuardianが報道しているのですから"rumour"じゃ済まないですよね。そこで、結局、感情的な言葉を避けて、"misinformation"にしました。「意図的な誤報」という意味になっているでしょうか?

ロンドンでは、なるべく"a frenzy of passionate argument"ではなく、"bird listening"を楽しもうと思います(笑)

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