野田首相「精神論だけでやれぬ」=福井県同意に期待―大飯再稼働

時事通信 6月10日(日)19時54分配信

野田佳彦首相は10日の講演で、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働する意向を表明したことについて「精神論だけでやっていけるのかというと、やはり国民生活、経済への影響を考えて、万が一ブラックアウト(停電)が起これば、大変な悪影響が出る」と述べ、夏場の電力が不足した場合の国民生活などへの影響を重視したことを強調した。
 首相は「1年前の(東京電力福島第1原発)事故の生々しい記憶が残っている中で、国民は複雑な思いを持っていると思うが、(再稼働の)判断が迫られている時期だった。(世論が)二分している問題について、しっかりと責任を持って結論を出すというのが政治の役割だ。私の責任の下で判断をさせていただいた」と強調。その上で「福井県で所要の手続きが進められることを強く期待したい」と述べ、同県の同意に期待を示した。 

今日、注目したいのは精神論という言葉である。野田首相は、日本の脱原発は精神論だと言い切った。

決まり文句だが、まだ「ウザい」が載っていない10年位前の「広辞苑」によると精神論とは「精神主義による論」。精神主義の意味とは何か?そこで、同じく「精神主義」を調べると「人間の精神力を決定的要因と考える立場」とある。

これも決まり文句だが、じゃ、英語では?日本人が英語を学ぶ大きな理由のひとつに、日本語を異なる言語体系と比較してより多角的に深く理解するということが挙げられるだろう。

で、私が持っている辞書や某社のオンラインディクショナリーには、精神論という言葉に一致するものが存在せず、「精神主義 (idealism, spiritualism)」という言葉へ直接連れて行かれる。

オックスフォードによれば(これも権威にすがっているだけ)、
*spiritualism
The belief that people who have died can send messages to living people, usually through a medium (= a person who has special powers).

となっており「(死後も心霊とは霊媒を通じて交信できるとする)心霊主義」という、とんでもない意味になる。哲学的には「唯心論」、「観念論」で、対義語は”materialism”となり「唯物論」、「物質主義」。

これは明らかに野田首相の精神論とは異なる。

では、idealismはどうか。某オンラインディクショナリーによれば、これは「精神主義」(対義語はmaterialism、「唯物論」、「物質主義」)の他に、「理想主義」(対義語はrealism、「現実主義」)とある。

再び、オックスフォード。
*idealism
The belief that a perfect life, situation, etc. can be achieved, even when this is not very likely。(その可能性が低い時に、完璧な生活や状態が達成されると信じること)

とあり、野田の精神論は、これに近い。こんな回りくどいことをしなくても、ネット(コトバンク)では精神論とは「多く、非現実的な傾向を揶揄(やゆ)する語」とあるので、ありがたく拝借しておけばよかったのである。

何だろ、この精神論のニュアンス。「心頭を滅却すれば火もまた涼し」でもない。ま、修行して火渡りをやる人もいるので、あながち揶揄することはできない(笑)

「神風が吹く」、「竹槍で米軍と戦う」などいう北朝鮮も真っ青の荒唐無稽な思い込みというのなら、まさに、その精神論なんだろうなとは思う。外国人に、このニュアンスは分かってもらえるだろうか。

また権威にすがりますが、野田氏のこの発言に関するニューヨークタイムスの記事は、精神論に全く言及していません。
http://www.nytimes.com/2012/06/09/world/asia/japans-prime-minister-seeks-public-support-for-nuclear-energy.html?_r=1&ref=japan

当面収まる気配のない超円高。更なる省エネが第一だが、今なら天然ガスの輸入が断然お得。電気を大量消費する製造業は、この円高で輸出できないのだから、生産量は増えない。国内向けの再生可能エネルギーの開発に勤しんで欲しい。

起こりそうもないブラックアウト歓迎。原発事故に比べれば微々たる損害だ。ブラックアウトは「停電」と共に「報道管制」も意味する。失笑だ。日本語で「停電」と言えばいいものを。

過半数(ニューヨークタイムスによれば3分の2)の国民が、現時点での大飯原発の再稼働に反対している中、精神論という言葉で、その真剣な選択を愚弄する野田は、もはや政治生命を失ったのである。早く選挙を。安全性は暫定的と言いながら、絶対安全と叫ぶ者が真の精神論者なのだ。



コメント

loving-c.
loving-c.
2012年6月12日18:42

激しく同意します。
おかしな満期釈放者と天気のせいで悲しくて泣いていたのですが、
その悲しみもすっかり飛びました。
ありがとうございます。

lister
2012年6月13日13:24

☆loving-c.さん

コメントをいただきありがとうございます。

野田に「脱原発は正論だよ。でもね、正論を振りかざすのは
良くないねぇ」と言われたのも同然。勢いだけで書いたのに、
loving-c.にお礼の言葉をいただくとは光栄です。私も元気づき
ました。

lister
2012年6月19日10:28

☆loving-c.さん

遅きに失しましたが、コメント中で「さん」抜きの
失礼な表現をしていることに今気づきました。大変
申し訳ございません。

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